ちくわぶを揚げたら新世代スイーツになった
友人とある高校の文化祭に行った時のこと。
たこやきやわたがしなどのありがちな模擬店が並ぶ中、ひとつだけ異彩を放つものがあった。
それは、「うどんチュロス」。
その名の通り、うどんを数本まとめて素揚げしたものに味付けを施したものだった。
私はそれが気になって仕方なくなり、勢いでうどんチュロスを購入した。
おそるおそる口に運ぶと……うまい!
外側はカリッとしていて、中はうどんのもちもちさがそのまま残っている。これは
世紀の大発明だ、とそばにいた友人に熱弁したが、その魅力はわかってもらえなかった。
それから2年。暇と小腹を持て余し、冷蔵庫を開けると、そこにはあるものが入っていた。
そう、ちくわぶである。
恐らく、鍋に入れようとしたのを忘れてそのままになっていたのだろう。
うどんもちくわぶも小麦粉なんだから、チュロスにできるんじゃない?
あの奇跡をもう一度味わいたい。その一心で、私はキッチンに立った。
まず、ちくわぶを取り出す。はんぺんのようにふわふわしているイメージがあったが、実際はずっとしっかりしている。
とりあえず、普段鍋に入っているのと同じ形状に切ってみた。後半3分の1でなぜか中央の穴が消失していて怖くなる。
いろいろな食感を楽しみたいと思い、薄いものと厚いものも作っておいた。
さて、さっそく揚げていこう。
170度に熱した油にちくわぶを入れて……。
あっ!!
古い油のまま揚げはじめてしまったせいで、鍋の底に溜まっていたカスがちくわぶにくっついてしまった。やってしまった……。
普段料理をしないから、こういうことになってしまう。
ひどいありさまである。
気を取り直して、フライパンで揚げていく。油跳ねも怖くない。最初からこうすればよかった……。と後悔しても、今更でしかない。
ちくわぶ同士がすぐにくっついてしまい、それをはがすのに一苦労する。
小麦粉のグルテンのせいだろうか?よくわからないが、はがしてもはがしてもくっついてしまう。
お前らはぷよぷよのおじゃまぷよかよ、と思いながらはがし続ける。
ほんのりきつね色になったら油から上げ、また次のちくわぶを入れる。
繰り返すこと15分、ようやく揚げ終わった。
この時点でかなりおいしそうだが、菜箸でつかむとかなり硬い。
もしかして、揚げすぎた……?
そんな疑念が頭をよぎる。いや、実際どうなのかは食べてみないとわからない。
カスがついてしまったものは食べられないので、きれいなものだけを皿に移して砂糖をまぶす。
やっぱりおいしそう。期待がどんどん高まっていく。
拡大してみると、いびつなドーナツのようにも見える。
では、さっそく食べてみよう。味やいかに……?
バキッ!ザクッ、ザク……
硬い。めちゃめちゃ硬い。
味はうどんチュロスを再現できているが、とにかく硬い。そして、砂糖だけでは小麦の味に負けてしまっている。くどい。
そう、こういうときのために分厚いちくわぶを用意していたのだ。
分厚いちくわぶにはちみつをかけてみる。これでダメだったら、もう諦めよう。
奇跡は、きっと起きる……!
口に入れ、ゆっくりと噛み締める。さっきまでの硬さはない。咀嚼すると、ちくわぶ特有のコシを兼ねたもちもち感が楽しい。さらに、はちみつの優しい甘さが口の中いっぱいに広がっていく。
正直、うどんチュロスを大きく超えるおいしさだ。
新大久保とかで映えそうなカップに入れて、チョコソースやメープルシロップをかけて売れば、映えに目がない中高生の間で爆発的に売れるに違いない!
ちくわぶさえあればすぐにできるし、味付けの幅は無限大。
P.S.
商品化の際は私までお知らせください。